講演概要

分科会 (Sep 2, 2025)
脂質を用いたバイオテクノロジーの開発
杉原 加織
東京大学 生産技術研究所 准教授
#脂質#生体膜#抗菌ペプチド#メカノクロミックポリマー
私達の研究の長期的な目標は、脂質やペプチドなどの生体分子の自己組織化を理解し制御することで、その超分子構造、機能、ヒトの健康における生理的役割を明らかにし、この専門知識をバイオテクノロジーの開発に応用することである。
ナノスケールの分子力や、曲がった力や異方性の検出など、既存の技術では測定できない力はまだ多く存在する。メカノクロミック材料は、こうしたニッチ分野で極めて重要な役割を果たすと期待されている。講演では、ポリジアセチレンと呼ばれるメカノクロミック脂質ポリマーのバイオセンシングに向けたメカニズムと応用について紹介する。
我々は、よく知られた2つの抗菌ペプチド(LL-37/HNP1)間のユニークな協奏効果を報告し、細菌をより効率的に殺す一方で、哺乳類細胞膜の破壊を抑制することで宿主のダメージを最小限に抑えることを示した。本発表では、生物物理学的アッセイにより、その分子メカニズムを解明するための最近の取り組みについて報告する。
参考文献
- [1] Nano Letters 2021, 21 (1), 543-549.
- [2] Biophysical Journal 2020, 119 (12), 2440-2450.