講演概要

守屋 央朗

分科会 (Sep 2, 2025)

細胞が壊れない仕組みを知るために、壊れ方を知る

守屋 央朗

岡山大学 学術研究院・環境生命自然科学学域 教授

#酵母#システム生物学#過剰発現#発現制約

このストーリーは、生命を分子レベルから一貫してシステムとして研究することを標榜した「システム生物学」が勃興し始めた2000年頃から始まる。システム生物学とはいうが、生命をシステムとして扱うとどんな新しいことが分かるのか?その代表的なものが「ロバストネス」であった(Kitano 2004)。ロバストネスとは、摂動にもかかわらず機能を維持しようとする(システムの)特性のことを言う。言うなれば、「生物がいかにして壊れないように作られているか」を説明しようとする概念である。私はそれまで酵母のグルコース関知機構の信号伝達を研究してきたが、どうも他人のふんどしで相撲を取っているような違和感を感じていた。そこで、みんなが数理モデルを使って「ある、ある」といっている「ロバストネス」とやらを、自分が培ってきた酵母の分子遺伝学の技術を使って調べてやろうじゃないかと考えた。「機能が維持されるパラメータの範囲とやらを調べる」ことが大事らしい。今までそんなことを調べて何かが分かると思ったことがなかったが、それが大事なIssueなんだと。・・・というわけでできたのが、遺伝子つなひき(gTOW)という実験系。そこからこのロバストネス解析で得られるものの意味を問い続けて、遂にたどりついたのが「細胞のロバストネスの設計地図(下図)」。本講演では、gTOWという実験系を作ってみて、それが誰に認められて、何を見つけようともがいたのか、そして今なお何にもがいているのかを、うまいこと話せたらと思う。


本講演の概要図