講演概要

分科会

「細胞死」の理論

姫岡優介 (東京大学 大学院理学系研究科 助教)
#代謝#数理モデル#大腸菌#細胞死#微分方程式

 「生きているとは何か」とか「死んだとは何か」とか、一見哲学的にしか議論ができなさそうな問題を、数理科学の問題として定量的に扱って、可能ならその「理論」みたいなものを作りたい—そんなことを思いながらこれまで研究をしてきた。大腸菌代謝の動力学モデル(微分方程式モデル)は、いじってみると色々と面白い挙動を示すので、ここ数年は代謝動力学モデルで遊んでいたのだけれど、いくつかのモデルは代謝状態を適当に摂動してやると「死んだ」ような、活性の低い状態に遷移することが分かった。

 この状態は「死んだ」状態なのだろうか、それとも例えば胞子に見られるような低活性の休眠状態に類するものなのだろうか。まじめにそれを考えてみたいのだが、そもそも数理モデルにおける「死」とは何であり、どのように扱われるべきなのだろうか。

 色々と文献を調べてみたものの、数理的に「死」を定義してその理論基盤を作るといった話はどこにも見当たらなかったので、制御理論に基づいて、あるひとつのフレームワークを構築してみた。我々の定義は「どんなに遺伝子発現を制御しても『生きている』状態に戻れない状態が『死』である」という、「そりゃそうだな?」くらいのものなのだが、この定義で議論を進めていくと、意外としっかり「死」にまつわる諸々を定量できて、かつ面白い性質も見えてきた。本講演では[1]をベースに、数理科学として「死」をどう扱えるかを議論したい。

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