メカノバイオロジー
講師:成瀬 恵治 先生(名大・医)
オーガナイザー:渡邊 俊(京大院・理)
最近の生物の世間の認識は、どんな生命現象もすべてホルモンやフェロモンなどの化学物質が、細胞膜のレセプターに作用することで説明がつくとさえ思われているようだ。幾分はそうかもしれないが、それが全てではないだろう。しかし化学物質(薬)応答の研究ばかりが注目されて過ぎて、それ以外の研究は誰もが重要だと思われながらもなおざりにされて来た。その一つが、「力学的刺激に対する応答」である。
最近になってやっと接着性細胞に対して、基板の硬さ・形を変える、引っ張る、押さえる、圧力をあげる、ズリ応力をかけるなどの研究が始また。その結果硬い基板に行く、引っ張る方向と垂直に延びる、押さえると硬くなる等の応答があることが示された。またこれらの応答に細胞骨格の再配置が行われる事が確認されている。特にアクチンフィラメントがストレスファイバーと呼ばれる束状でほぼ並行に並ぶ構造が良く出る、方向を変える等も見られている。しかし、今は応答する事が分かっているだけで、いったいどんな仕組がその外力と応答を結びつけているのかは、まだまだブラックボックスである。
外力と生命系はいったいどのような関係で継っているのだろうか。生物物理に足を進めた学生なら一度は興味をもったはずだろう。今回講師としてお迎えする成瀬先生はそんな細胞の力学応答を見る研究をしてこられた方である。先生にメカノバイオニクスについて語っていただき、そのブラックボックスに夢でも野望でもぶつけてほしい。